朝起きたら手が動かない! 橈骨神経麻痺かもしれません|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

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手肘疾患の解説ページ(ブログ)

朝起きたら手が動かない! 橈骨神経麻痺かもしれません|まえだ整形外科・手のクリニック|東京都杉並区にある手外科・整形外科

朝起きたら手が動かない! 橈骨神経麻痺かもしれません

朝起きたら手がうまく動かない!びっくりして不安になりますよね。神経の圧迫による橈骨(とうこつ)神経麻痺かもしれません。

橈骨(とうこつ)神経麻痺とは?

橈骨神経は手の甲の感覚をつかさどっており、手くびや指を伸ばす筋肉に命令を出しています。そのため神経が麻痺すると、手の甲のしびれが出たり、手くび・指がのびなくなるため、手が使いにくくなります。

最も多い原因が、二の腕から肘にかけての圧迫です。お酒を飲んだ後に寝てしまい、イスの肘掛けや自分の頭で神経が圧迫され、目が覚めたら手が動かないことに気づいたというケースが典型的です。

”土曜日の夜の麻痺”と呼ばれています。

放置したらどうなる?

外から神経が圧迫されていたエピソードがはっきりしていれば、完全に回復することがほとんどですのでご安心下さい。

なんで麻痺するの?

かたいイスやソファにもたれて寝る、自分の頭を腕に乗っけて寝る、腕枕などで発生します。

神経は、上腕骨(二の腕の骨)を回り込むように走っています。二の腕の真ん中から肘にかけての部分では、神経と骨の間に何もないため、圧迫されやすいのです1

症状は?

下垂手

親指から小指のMP関節が伸びなくなります。物をつかむ直前、人間の指は無意識にのびますが、この自然な動きがなくなるため、手が使いにくくなります。

第一・第二関節を伸ばす筋肉は、別の神経が命令を出しているので麻痺しません。

肘から上の圧迫では、手くびも起こせなくなります。

しびれ・感覚のにぶさ

肘から上の圧迫の場合のみ、図のグリーン部分にしびれが出ます。

痛みはないことが殆どです。

いつになったら治るの?

数週間~2ヶ月程度で治ることがほとんどです。

自然に治ると言われても、自分の手が思い通りにならない状態が数日でも続くと、本当に治るのかと不安になられると思います。

2週間程度で回復してきたと感じる方が80%以上という報告がありますので、あまり心配される必要はありません。

短期間であっても、麻痺した状態では仕事や生活にとても困るという方は、手くび~指を固定するスプリントを装着すると、手が使いやすくなります。
当クリニックでは、ハンドセラピストが患者さんの仕事や生活スタイルにあわせてスプリントを作成しておりますので、ご相談下さい。

圧迫のエピソードがない場合

ほとんどの橈骨神経麻痺は、ご説明したように外からの圧迫によるもので、自然回復する事がほとんどです。しかし明らかな圧迫のエピソードがない場合、以下の病気の場合があります。

後骨間神経症候群

肘から先、橈骨神経は様々な筋肉の間の狭いスペースを走っているため、体内での圧迫でも麻痺が発生します2-4

  • 前腕を回す動作の繰り返しによって、筋肉が神経を圧迫する。
  • ガングリオンなどの出来もので神経が圧迫される。腫瘍では脂肪腫が多いです。
  • 関節リウマチなどの炎症によって関節が腫れ、神経が圧迫される。


などがあります。

神経痛性筋委縮症

肩まわりの激痛から始まることが多いです。痛みは次第に引きますが、そのあとに麻痺が起こってきます。橈骨神経以外の神経も同時に麻痺することがあります。

カゼやインフルエンザ、軽いケガ、予防接種などのあとの発生が報告されていますが、きっかけが何もないこともあります5-6

特発性後骨間神経麻痺

神経に”くびれ”が発生し、麻痺がでます。

腕の動きにともなう神経のねじれや炎症が関与していると考えられていますが、はっきりしたことは分かっていません。

圧迫のエピソードがはっきりしない場合、治療が異なったり、回復までより時間がかかる場合もあります。必ず診察を受けるようにしましょう。

(文責:院長)

参考文献

  1. Clinical features of wrist drop caused by compressive radial neuropathy and its anatomical considerations.
    Han BR, Cho YJ, Yang JS, Kang SH, Choi HJ. J Korean Neurosurg Soc. 2014 Mar;55(3):148-51.
  2. Management of Atraumatic Posterior Interosseous Nerve Palsy.
    Sigamoney KV, Rashid A, Ng CY. J Hand Surg Am. 2017 Oct;42(10):826-830. 

  3. Posterior interosseous nerve terminal branches.
    Elgafy H, Ebraheim NA, Rezcallah AT, Yeasting RA. Clin Orthop Relat Res. 2000 Jul;(376):242-51.

  4. Unusual compression neuropathies of the forearm, part I: radial nerve.
    Dang AC, Rodner CM. J Hand Surg Am. 2009 Dec;34(10):1906-14. 

  5. Anterior interosseous nerve and posterior interosseous nerve involvement in neuralgic amyotrophy.
    Akane M, Iwatsuki K, Tatebe M, Nishizuka T, Kurimoto S, Yamamoto M, Hirata H. Clin Neurol Neurosurg. 2016 Dec;151:108-112.

  6. Idiopathic brachial neuritis.
    Gonzalez-Alegre P, Recober A, Kelkar P. Iowa Orthop J. 2002;22:81-5.

前田 利雄

記事監修

院長 前田 利雄
(まえだ としお)

  • 昭和大学医学部卒 医学博士
  • 日本手外科学会認定 手外科専門医・指導医